中原区医師会学術講演会

日時:平成29年10月17日(火)

場所:川崎市中原区精養軒

内容:特別講演

「アルコール代謝酵素の遺伝子多型とアルコール関連疾患(がん、肝臓、依存症、上部消化管疾患、バレット上皮など)              演者:国立病院貴構 久里浜医療センター 臨床研究部長 横山 顕 先生

内容:アルコールは体内でアセトアルデヒド(発癌物質)を経て無害な酢酸に代謝される。アセトアルデヒドを酢酸に代謝する酵素で大きな働きをするのがALDH2という酵素である。日本人にはこの酵素の働きが強い人(ホモ型)が58%、弱い人(ヘテロ型)が35%、完全欠損型(Null型)が7%いる。完全欠損型はいわゆる下戸で、アルコールを飲むとアルデヒドが体内で代謝されないので動悸、眩暈、体が赤くなるなどの症状を呈する。 ホモ型の人は酒に強いタイプ。ヘテロ型は訓練によって飲めるようになるが、最初のうちは顔が赤くなる(フラッシング)。

アルコールをアセトアルデヒドに分解する酵素で大事なのがアルコールでヒドロゲナーゼ(ADH1B)である。日本人はこの酵素の種類により、アルコールの代謝の早い人がほとんどだが、アルコール代謝の遅い人が5-7%いて、この人たちはアルコールが体からいつまでたっても分解されないので、アルコール依存症になりやすいという。

 

アルコール
分解酵素
ADH1B
アルデヒド
分解酵素
ALDH2
説明
遅い型 活性型 A型:頻度は一般の人で4%、アルコール依存症では27%。飲酒で赤くなる不快な反応が無く、たくさん飲むとアルコールが抜けずに翌朝も酒臭い。アルコール依存症になりやすい体質。飲酒で脂肪肝、ビール腹になりやすい。
速い型 活性型 B型:頻度は一般の人で54%、アルコール依存症では60%。飲酒で赤くなる不快な反応が弱く、アルコールをどんどん分解するので肝臓などの臓器の負担が大きく、肝硬変、膵炎、糖尿病、痛風、やせ型になりやすい。
遅い型 ヘテロ
欠損型
C型:頻度は一般の人で3%、アルコール依存症では4%。飲酒で赤くなる不快な反応がやや弱く、飲めるタイプと勘違いして飲んでいる人が多い。アセトアルデヒドの分解が遅く、アセトアルデヒドがたまって大球性貧血が起こりやすく、食道癌の危険が非常に高い。毎年食道癌検診を受けましょう。
速い型 ヘテロ
欠損型
D型:頻度は一般の人で33%、アルコール依存症では9%。飲酒で赤くなり、もともとは酒に弱い。鍛えてアルコール異常症になった人が多い。大球性貧血と白血球減少が特に起こりやすく、食道癌の危険も高い。毎年食道癌検診を受けましょう。
2017年10月18日